CADの漫画感

人に勧めたい漫画、気になった漫画を語ります

九井諒子短編集 竜の学校は山の上、竜のかわいい七つの子、ひきだしにテラリウム:タンジョン飯より万人にオススメ!九井諒子の世界観に引き込まれる短編集

 まず最初に言っておきたいのは、

 

僕のブログ記事は読まなくても・・・この本は読んでくださぁい!

 

というぐらいオススメの作品達だということです。

 

竜の学校は山の上 九井諒子作品集

竜の学校は山の上 九井諒子作品集

 

 

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)

 

 

ひきだしにテラリウム
 

 

九井諒子さんといえばハルタで連載されている『ダンジョン飯』が、『このマンガがすごい!』で1位になって有名になったので知っている方は結構いると思います。

ダンジョン飯』も、よく練り込まれた独特の世界観の作品で面白くてオススメなんですが、ちょっとグロキモいところがあるしファンタジー(ジャパンRPG的世界観、ローグ系)にかなり寄っているので、特に未読の方にはまず今回紹介する3つの短編集をオススメしたいです。

 

いずれの作品も1話完結かごく短いショートショートのみで構成されています。

一つの作品の中では設定的につながっている話もあったりしますが、どれから読んでも問題ないです。

 

独特の世界観と先の気になるストーリー展開、話の意味を理解した瞬間の快感

人魚のいる世界、明らかにドラクエの典型的ファンタジー、日本の江戸時代あたりの話など、種類もいろいろ、独特な設定の話も多いですが、数コマ読んだだけでどういう舞台、世界観の話なのか理解できるような構成になっており非常に読みやすいです。

一方で、舞台設定の根底自体を話の主軸やオチに持ってきている話も多く、いずれの場合も「これどういう話なんや?」と疑問を持って読んでいくうちに次の気になる展開につながり、途中から「もしかしてこれって…」と舞台や世界観自体に仕組まれたギミックやメッセージに気付かされる楽しさがあります。

 

ジャンルとしては感動、笑い、教育的教訓など様々な種類の話がありますが、今読んでいるのがどういう話なのかを理解することそのもので快感が得られるような構成になっているものが多いです(アハ体験的な)。

 

話のオチまでの持って行き方、構成が非常にうまくて、無駄なコマとかないんじゃないか??と思うくらいです。

 

3作品それぞれの特徴

・竜の学校は山の上

一番最初に出した単行本なので、今の絵とは雰囲気が違い線も粗めの話が多いですが、これはこれで味という感じだし話の面白さに遜色はありません。

ただ、終わり方が結構あっさりしている話が多い気はします。

 

竜のかわいい七つの子

2作目です。

感動系の話が多めで、この記事を書くのに読み直して半分くらいの話で泣きました(泣きすぎ)。

3作品のうちだと僕はこれが一番好きです。

 

・ひきだしにテラリウム

3作目です。

完全なショートショート集ですのでテンポよく読めて笑える話が多いです。

僕は3つのうちこれを最初に読みましたが、最後まで読み終わった時にはぶっ飛び大爆笑でした。(意味は通して読んでもらえればわかります)

 

 

僕が一番好きというのもありますが、最初に読むなら竜のかわいい七つの子がおススメです。

 

 

異種族共存世界によって描かれるメッセージ

以下、ちょっと真面目系の考察になりますが、九井さんの作品では異種族同士の関係についてフォーカスされることが多いです。

例えば「竜の学校は山の上」では、いわゆる普通の人間である猿人と上半身は人間で下半身は馬の馬人という二つの種族が共存している世界を描いています。

馬人は猿人と比べて労働意欲が高く睡眠時間も短いなど社会において重宝されており、猿人のキャラが馬人の同僚を羨ましがっていますが、馬人は馬人で猿人の自由な生き方に憧れを抱いているという一面が描かれています。

 

このように異種族が共存する話というのものは短編集で何度も出てきますし、ダンジョン飯でもいろんな種族が登場しており、それぞれの種族の違いを強調して話の展開の中で生かされています。

漫画の中ではファンタジーとして描かれていますが、僕は現実世界でも頻繁にある国籍や地方性などの違いによるすれ違いが無くなってほしいという九井さんからのメッセージではないかと思っています。

現実では、人間社会において少なくとも見た目は人間である人ばかりなので、どんな相手であっても勝手に共通の価値観を持っていると心の底で思ってしまっている部分があります。しかし実際には根底となる考え方が違うということは同じ国籍や年代だとしてもよくある話で、その勘違いによって不要ないさかいが起きてしまうことは少なくありません。

 

九井さんは漫画を通してこういったすれ違いによる争いに警鐘を鳴らしている…!?とまでは行かないかもしれませんが、みんな個性を認めあって楽しく生きていこうよくらいのことは言いたいんじゃないかと、この柔らかな絵を見ていると思わされるといったところです。

 

 

メッセージ性についていろいろ書きましたが、上の解釈はちょっと無理やり目に考えたもので、漫画自体に説教臭さみたいなものは全然なくて万人におススメできる漫画だと思います。

ぜひ読んでみて面白ければ他の人にも薦めてあげてください。